株式会社ノイズ研究所

規格情報 ISO 10605 Ed.3 2023(静電気試験)の概要

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【 ISO 10605 Ed.3 2023の試験概要 】

1.一般的事項

車両内での動作または車両の乗り降りの際に生じる電荷の蓄積による静電気放電は、自動車に搭載される電子機器の誤動作を引き起こす要因であり、搭載電子機器の数が増加するにつれてますます重要となってきています。

この規格は、帯電した人体から電子機器に放電する静電気現象を想定し、その際に発生する電流波形を再現するための静電気発生器を用いて試験を行うことを規定しており、従来よりある様々な産業で共通して用いられている静電気試験で不足する項目を補い、自動車規格に適合した試験が規程されています。

また、梱包やメンテナンス時の取扱い時における各モジュールの静電気耐性を評価するための試験手順についても規定しています。

2.試験レベル

以下の試験レベルは、参考情報です。カテゴリは、電子部品の機能重要度により分類されます。

電子部品試験-直接接触放電と直接気中放電の厳しさのレベル例-(供試品の動作状態が対象)

試験レベル直接-接触放電直接-気中放電
カテゴリ 1カテゴリ 2カテゴリ 3カテゴリ 1カテゴリ 2カテゴリ 3
Level 4±8kV±8kV±15kV±15kV±15kV±25kV
Level 3±6kV±8kV±8kV±8kV±8kV±15kV
Level 2±4kV±4kV±6kV±4kV±6kV±8kV
Level 1±2kV±2kV±4kV±2kV±4kV±6kV

電子部品試験-間接接触放電の厳しさのレベル例-(供試品の動作状態が対象)

試験レベル間接-接触放電
カテゴリ 1カテゴリ 2カテゴリ 3
Level 4±8kV±15kV±20kV
Level 3±6kV±8kV±15kV
Level 2±4kV±4kV±8kV
Level 1±2kV±2kV±4kV

電子部品試験-パッケージング及びハンドリング試験の厳しさのレベル例-

直接-接触放電直接-気中放電
カテゴリ 1カテゴリ 2カテゴリ 3カテゴリ 1カテゴリ 2カテゴリ 3
試験後の 通電機能確認±1kV±2kV±4kV±8kV±15kV±25kV

実車試験-車両内における接触放電と気中放電の厳しさのレベル例-

試験レベル接触放電気中放電
カテゴリ 1カテゴリ 2カテゴリ 3カテゴリ 1カテゴリ 2カテゴリ 3
Level 4±6kV±8kV±8kV±8kV±15kV±15kV
Level 3±4kV±4kV±6kV±6kV±8kV±8kV
Level 2±2kV±2kV±2kV±4kV±4kV±6kV
Level 1±2kV±2kV±4kV

実車試験-車両外における接触放電と気中放電の厳しさのレベル例-

試験レベル接触放電気中放電
カテゴリ 1カテゴリ 2カテゴリ 3カテゴリ 1カテゴリ 2カテゴリ 3
Level 4±6kV±8kV±8kV±15kV±15kV±25kV
Level 3±4kV±6kV±6kV±8kV±8kV±15kV
Level 2±2kV±2kV±4kV±4kV±6kV±8kV
Level 1±2kV±2kV±4kV±6kV

3.発生器の仕様および出力波形の検証

■ 静電気試験器の仕様

 静電気試験を行う場合、下記の仕様を満たす試験器を使用します。

項 目仕 様
出力電圧-接触放電2kV~15kV
出力電圧-気中放電2kV~25kV
出力電圧精度5%以下
極 性正 および 負
電流波形の立上り時間(10%~90%)0.7ns~1ns
電圧保持時間5s以上
コンデンサ定数150pF,330pF
抵抗定数2kΩ,330Ω
放電チップの形状イラスト

15kVより高い試験電圧における気中放電の場合は、空気中へのリークを避けるために、より大きな電極チップを使用することができる。

■ 静電気試験器の特性(接触放電モード電流の仕様)

 下記の放電電流特性を確認する必要があります。

コンデンサ/抵抗第1peak電流t1電流t2電流下記図表
150pF/330Ω3.75A/kV ±10%2A/kV±30% (t1=30ns)1A/kV ±30% (t2=60ns)
330pF/330Ω2A/kV±30% (t1=65ns)1A/kV ±30% (t2=130ns)
150pF/2kΩ3.75A/kV +30% -0%0.275A/kV±30% (t1=180ns)0.15A/kV±50% (t2=360ns)
330pF/2kΩ0.275A/kV±30% (t1=400ns)0.15A/kV±50% (t2=800ns)
放電抵抗330Ωの5kV時の電流波形のイラスト

放電抵抗330Ω(5kV時)

放電抵抗2kΩの5kV時の電流波形のイラスト

放電抵抗2kΩ(5kV時)

■ 出力電流波形の確認

 静電気試験器の波形確認は、ファラデーケージまたは1.2m×1.2m以上の金属板の中央に規定の電流波形観測用ダーゲットを取り付け、1GHz以上の帯域幅を持つオシロスコープを用いて確認を行います。

 放電電極(放電ガンの先端チップ)をターゲットに接触させ、静電気試験器は接触放電モードに設定します。なお、試験器のリターンケーブルは、そのケーブル長の中央で折り返し、ターゲットより0.5m真下の位置の端子に接続します。

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■ ターゲットの校正

 電流波形観測用ターゲットは、専用の測定治具を用いて周波数特性を検証する必要があります。

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4.試験のセットアップと試験手順

■ 共通事項

 ・グラウンドプレーン:サイズ1.6×0.8m以上で、セットアップ時にDUTや周辺機器などから0.2m以上大きく、接続抵抗は25mΩ以下とします。

 ・絶縁ブロック:高さ50±5mm。全ての辺において試験構成より20mm先まで広げます。

 ・DUTの機能試験のために必要な全ての周辺ユニットに接続し、ワイヤハーネスの長さは1.7m(+0.3m -0)とします。

 ・全ての構成部品は互いに0.2m以上離します。

 ・ワイヤハーネスはグラウンドプレーンのエッジから0.1m離して結束し、絶縁ブロックに固定します。

 ・電源バッテリは試験テーブル上に置き、陰部端子をグラウンドプレーンに直接接続します。

 ・試験台は他の誘電構造物から0.1m以上離します。

 ・直接放電の場合は、静電気試験器の放電帰路ケーブルはグラウンドプレーンに接続します。

 ・CR定数は機器の搭載位置により150pFまたは330pFを選択し、330Ωを使用します。

 ・2つ以上の試験レベルを実施します。

 ・シャーシに直接取り付けない電子機器は、絶縁ブロックを使用します。

■ 電子部品試験(電源供給あり)-直接放電 接触および気中-

 ・正および負極性で最低3回、1秒以上間隔で試験します。

 ・手の触れるところすべてに印加します。

 ・シャーシに直接取り付けない電子機器は、絶縁ブロックを使用します。

【接触放電の場合】

 ・放電電極は、放電スイッチを動作させる前にDUTの通電ポイントに接触させます。

 ・塗装表面が絶縁被覆でない場合、塗装面を放電電極の先端部で貫通させて接触させます。

 ・放電電極は、DUTの表面に対して垂直に維持します。

【気中放電の場合】

 ・放電電極のチップは放電スイッチを動作させた後、できるだけ迅速(0.1m/s~0.5m/s)に放電ポイントに接触するまでDUTに移動させ印加します。

 ・導電材の塗装に絶縁塗装が宣言されている場合、気中放電を実施します。

ISO10605電子部品試験(電源供給あり)直接放電 接触および気中の試験イメージ

■ 電子部品試験(電源供給あり)-間接放電-

 ・接触放電でグラウンドプレーンに加えて印加します。

 ・1s以上の間隔で10回以上試験します。

 ・DUTのそれぞれの側のポイントでグラウンドプレーンに印加します。

 ・DUTは一番近い表面が放電を受けるグラウンドプレーンのエッジから0.1m離れるように位置させます。

 ・DUT、ハーネスから0.1mの位置に印加します。

 ・CR定数は機器の搭載位置により330pFを選択し、330Ωを使用します。

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■ 電子部品試験(電源供給あり)-FCPを用いた直接放電

 ・正および負極性で最低3回、1秒以上間隔で試験します。

 ・CR定数は機器の搭載位置により150pFまたは330pFを選択し、330Ωを使用します。

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■ 電子部品試験(電源供給あり)-FCPを用いた間接放電

 ・アイランドに対して正および負極性で最低10回、1秒以上間隔で試験します。

 ・CR定数は機器の搭載位置により330pFを選択し、330Ωを使用します。

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■ 電子部品試験(電源供給なし)-パッケージングとハンドリングESD感受性試験-

 ・CR定数は150pFを使用し、人体が直接触れる場合(2kΩ)および金属物を持った状態で触れる場合(330Ω)のそれぞれを想定した抵抗での試験を実施することをお勧めします。

 ・2つ以上の試験レベルを実施します。

 ・1s間隔以上で正および負極性で各3回以上試験します。

 ・接触放電は、手の触れるところすべてに印加します。

 ・印加後、1MΩ±20%の除電抵抗で供試品を除電した後に通電し、正常に動作することを確認します。

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■ 実車試験-車両内外の試験-

 ・車両内で人が簡単に手を触れることができる箇所は、330pF/330Ωまたは2kΩで試験します。

 ・車両外から人が手をふれることができる箇所は、150pF/330Ωまたは2kΩで試験します。

 ・グラウンド線はシートレールなどのシャーシに接続します。車外試験は、近くのシャーシまたはタイヤの下の金属板に接続します。

 ・車両内外ともに接触・気中の両方で試験します。

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車両内試験

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車両外試験

注意: この試験概要は、ISO10605 Ed.3 2023規格を元に記載しております。詳細な試験方法等につきましては規格書の原文をご確認ください。

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