株式会社ノイズ研究所

規格情報 IEC 61000-4-39 近接照射イミュニティ試験の概要

NoiseKen

【 IEC 61000-4-39 Ed.1 2017 の試験規格概要 】

1.一般的事項

送信機がEUTに近接して使用される状況においての放射電磁エネルギーに対する電気・電子機器の耐性試験について規定しています。「近接」とは一般に、送信機とEUT間の距離で、RF電界(周波数が26 MHzを超える)の場合は200 mm以下、磁場(周波数が26 MHzを下回る)の場合は500 mmです。

試験は、ポータブル送信デバイスや固定送信デバイス、および他のモバイル送信デバイスなどに近接することで、電磁妨害に曝される固定設置機器やモバイル機器を考慮しています。なお、本試験はIEC61000-4-3/20/21/22等の他の規格とは異なる試験法が使用され、整合性が取れない場合もある為、個別に試験を実施する必要があります。

2.試験レベル

試験は周波数範囲全体に実施する必要はありません。選択する試験周波数範囲は、近接する送信機からの干渉が予想される周波数に従って定義します。

2.1. 周波数範囲9kHz?150kHzでの試験レベル[磁界]

9kHz~150kHzの周波数範囲での試験レベルを以下の表に示します。

レベル磁界強度 A/m
11
23
310
430
X特別

※ Xはオープンクラスで製品仕様書で規定できる。

表に示す試験レベルは、レベル設定用の無変調信号時の振幅で、実際の試験ではAM1kHz 80%変調にて試験を実施します。

■ AM変調(80%)の振幅変調

2.2. 周波数範囲150kHz?26MHzでの試験レベル[磁界]

150kHz?26MHzの周波数範囲での試験レベルを以下の表に示します。

レベル磁界強度 A/m
10.1
20.3
31
43
X特別

※ Xはオープンクラスで製品仕様書で規定できる。

表に示す試験レベルは、校正時の無変調信号時の振幅となり、実際の試験ではパルス変調にて試験を実施します。パルス変調のイメージは「2.4. 周波数範囲380 MHz~ 6 GHzでの試験レベル[電界]」の図を参照ください。

また、パルス変調の変調周波数は、製品群規格に応じて対応してください(必要に応じて製品委員会が決めます)。

・デューティーサイクル : 50 %

・変調周波数 : 2 Hz or 1 kHz

・ON/OFF比 : 最低20 dB

2.3. 周波数範囲26MHz?380MHzでの試験レベル

試験レベルは検討中(審議中)のため、規定はありません。

2.4. 周波数範囲380 MHz~ 6 GHzでの試験レベル[電界]

380 MHz~ 6 GHzの周波数範囲での試験レベルを以下の表に示します。

レベル電界強度 V/m
110
230
3100
4300
X特別

※ Xはオープンクラスで製品仕様書で規定できる。

表に示す試験レベルは、校正時の無変調信号時の振幅となり、実際の試験ではパルス変調にて試験を実施します。

また、パルス変調の変調周波数は、製品群規格に応じて対応してください(必要に応じて製品委員会が決めます)。

・デューティーサイクル : 50 %

・変調周波数 : 2 Hz、 217 Hz、 1 kHz

・ON/OFF比 : 最低20 dB

■ パルス変調(50%デューティサイクル、217 Hz)試験レベルと、信号発生器の出力で発生する波形の例

3.試験装置

3.1. 磁界イミュニティ試験の試験装置(9kHz~26MHz)

試験装置は以下に記載する装置にて構成します。

9 kHz to 150 kHz150kHz~26MHz
信号発生器内部または外部変調機能を備えていること
電力増幅器誘導性負荷を駆動可能なこと
放射ループアンテナ直径:120±10mm ターン数:20 線径:約2.0 mm(AWG12) ループ平面から50 mmの距離の磁場は、以下の式により計算します。 H = 75,6 × I (A/m) H:磁界強度 (A/m) I:電流 (A).直径:100±10mm ターン数:3 線径:約1.0 mm
磁場ループセンサー直径:40±2 mm(直径40 mm未満も可) ターン数:51 線径:約0.07 mm(たとえば、7本より線 41 AWG) シールド:静電 換算係数:製造元のデータを参照直径:40±2 mm(直径40 mm未満も可) ターン数:1 線径:約0.5 mm シールド:静電 補正係数:製造元のデータを参照
電圧計
電流モニタ実効値の測定ができること

3.2. RFイミュニティ試験の試験装置(380MHz~6GHz)

試験装置は以下に記載する装置にて構成します。なお、周波数範囲26 MHz?380 MHzの送信アンテナは検討中です。

信号発生器内部または外部変調機能を備えた信号源
パワーアンプ信号(無変調および変調)を増幅し、必要な試験レベルまでTEMホーンアンテナに電力を供給できること。 3次高調波は、パワーアンプの出力で測定された基本周波数より少なくとも6 dB低くなければなりません。
方向性結合器
パワーメーター進行波電力を測定できること
TEMホーンアンテナ
スペーサーTEMホーンアンテナの基準点とEUTとの距離を保つためのスペーサー、またはその他の手段。 スペーサーを使用する場合、剛性ポリスチレンなどの低誘電率(低誘電率、εrが約1)の材料を使用します。
試験施設無線サービスおよび/または試験要員の保護のための機器または試験施設(電波暗室、半無響室など)
電界強度プローブ

4.試験のセットアップ

4.1. 磁界イミュニティ試験のセットアップ(9kHz~26MHz)

試験環境は、全ての試験装置およびEUTを収容するのに適したサイズにする必要があります。

放射アンテナは金属表面(信号発生器やアンプなど)から少なくとも1m以上の距離を離す必要があります。(ただし、補助機器やEUTおよび床面は除く)

EUTは非導電性で低透磁率の支持台の上に、実際に使用される状態で配置します。また、機器のハウジングまたはケースの接地は、メーカーの製品仕様書(設置推奨事項)と一致している必要があります。

卓上機器(テーブルトップ、ポータブル、および壁に取り付けられるEUT)は、高さ0.8±0.05mの非導電性で低透磁率の支持台上に配置します。なお、EUTが床置き装置の場合、床から100±50mmの距離までは試験の実施が許容されます。

IEC61000-4-39磁界イミュニティ試験(放射ループアンテナ9kHz~150kHzの試験のイメージ)

放射ループアンテナを使用した床置き型EUTへの試験例

周波数範囲9 kHz~150 kHz

(100 mm×100 mmウィンドウサイズ)

磁界イミュニティ試験(放射ループアンテナ150kHz~26MHzの試験のイメージ)

放射ループアンテナを使用した床置き型EUTへの試験例

周波数範囲150 kHz~26 MHz

(80 mm×80 mmウィンドウサイズ)

機器の通常の使用位置で磁場による照射を受ける各面は、表に指定されているように、試験のために等しいウィンドウサイズに分割されます。 特定のEUTまたは試験セットアップの都合上、試験距離3 mmの公差を簡単に維持できない場合(たとえば、EUTの表面が平らでない場合)、試験距離の公差(つまり、3 mmの公差より大きい)が許可されます。 そのような場合は、試験報告書に記載します。

ウィンドウサイズと試験距離を以下の表に示します。

周波数範囲最大ウィンドウサイズ mm試験距離 mm
9 kHz to 150 kHz (120 mm 放射ループアンテナ)100 × 10050 ± 3
150 kHz to 26 MHz (100 mm 放射ループアンテナ)80 × 8050 ± 3

4.2. RFイミュニティ試験のセットアップ(380MHz~6GHz)

試験環境は、無線通信機器への影響を及ぼすため、シールドルームまたは電波暗室内で行う必要があります。また、必要な全ての試験装置およびEUTを収容するのに適したサイズで、試験結果に影響を抑えるためにEUTの表面と試験施設の壁と天井は0.8 m以上離す必要があります。

TEMホーンアンテナを除くすべての試験装置は、EUTから少なくとも0.8 m離れている必要があります。

EUTは非導電性で低透磁率の支持台の上に、実際に使用される状態で配置します。また、機器のハウジングまたはケースの接地は、メーカーの製品仕様書(設置推奨事項)と一致している必要があります。

卓上機器(テーブルトップ、ポータブル、および壁に取り付けられるEUT)は、高さ0.8±0.05mの非導電性で低透磁率の支持台上に配置します。

EUTが床置き装置の場合、床から100±50mmの非導電性で低透磁率の支持台上に配置します。

TEMホーンアンテナを使用した床置き型EUTへの試験例

TEMホーンアンテナを使用した卓上型EUTへの試験例

5.試験の実施

試験は試験計画に従って実施し、適用した各妨害波の試験周波数ごとにEUTの動作状況を監視し、試験計画で指定された性能基準への適合を評価します。

○ 気候条件は、EUTおよび試験機器の仕様範囲内で実施します。

○ EUTまたは試験装置に結露を引き起こすほどの状態では試験を実施してはいけません。

○ 電磁環境は試験結果に影響を与えず、EUTが正しい動作をするようにします。

○ すべての試験は、実際の設置条件に可能な限り近い構成で実施します。

○ 配線は、メーカー推奨品と一致させ、機器はすべてのカバーとアクセスパネルを備えたハウジング内に設置します。

○ 試験中のEUTの動作条件は、最も感受性の高い動作モードにて実施します。

■ 磁界イミュニティ試験時の周波数範囲とステップサイズ (※ RF電界イミュニティ試験は最大1%のステップサイズ)

周波数範囲 kHzリニアステップ kHz
9 kHz ~ 150 kHz10
150 kHz~ 1000 kHz100
1000 ~ 26000 kHz1000

5.1. 磁界イミュニティ試験9 kH~150 kHzの校正手順

① EUTは置かずに、磁界ループセンサーと放射ループアンテナの中心軸上50±3 mmの距離に配置します。この時の測定距離は磁界ループセンサーの巻線中心点と放射ループアンテナの巻線中心点の距離となります。

② 磁界ループセンサーからの出力を電圧計に接続します。

③ 信号発生器の周波数を試験範囲の最低周波数(9 kHzなど)に設定します。

④ 無変調にて出力します。(変調はせず、無変調にて校正を実施します。)

⑤ 放射ループへ供給する電流を計算し試験レベルとなるまで調整します。(10 A/m r.m.s.を得るために必要なループ電流は0.132 A.m.s.となります)

⑥ 磁界ループセンサーに誘導された電流を読み取ります。

⑦ 測定した周波数の電圧に対して磁界ループセンサーの変換係数を適用して磁界強度を計算します。磁界強度は指定の試験レベルから±10%を超えないようにし、磁界強度が試験レベルを超えた場合は再度調整をします。

⑧ 表に指定されているステップ以下で周波数を上げます。

⑨ 次の周波数が試験周波数範囲内の最高周波数を超えるまでステップ④?⑧の手順を繰り返します。最後に、この最高周波数で④?⑦の手順を実施します。

⑩ 最高周波数で試験信号の変調をオンにし、試験信号の変調が正しいことを確認します。

5.2. 磁界イミュニティ試験150 kH~26 MHzの校正手順

① EUTを置かず、磁場ループセンサーを放射ループアンテナの中心軸上に50±3 mmの距離に配置します。この時の測定距離は磁界ループセンサーの巻線中心点と放射ループアンテナの巻線中心点の距離となります。

② 放射ループを信号発生器および電力増幅器に接続し、磁界センサループの出力を測定受信器に接続します。

③ 信号発生器の周波数を試験範囲の最低周波数(例えば150kHz)に設定し出力します。変調信号はしません。(変調は適用せず、無変調にて校正を実施します。)

④ 必要な試験レベルになるように、放射ループに供給される電力を調整し記録します。

⑤ 表に指定されているステップサイズ以下で周波数を上げます。

⑥ 次の周波数が試験周波数範囲内の最高周波数を超えるまでステップ④?⑤の手順を繰り返します。最後に、この最高周波数で④?⑤の手順を実施します。

⑦ 最高周波数で試験信号の変調をオンにし、試験信号の変調が正しいことを確認します。

放射ループレベル設定

5.3. 磁界イミュニティ試験の実施(9 kH~150 kHz、150 kH~26 MHz 共通)

○ 試験は「2.1. 周波数範囲9kHz?150kHzでの試験レベル[磁界]」、「2.2. 周波数範囲150kHz?26MHzでの試験レベル[磁界]」に規定されたレベルに基づき、試験信号をEUTに曝します。

○ 試験は、EUTが最も敏感な動作モードで、放射コイルの平面がEUTと平行になるように、50±3 mmの距離に配置します。

○ 校正されたレベルの磁場を発生させEUTに曝します。

○ 周波数範囲は、変調された信号でスイープさせ、必要に応じて試験システムや放射コイルを切り替えます。

○ 各周波数ステップ時の試験の滞留時間は、EUTが試験信号に適切に応答するのに充分な長さである必要があり、最短滞留時間は2秒です。また、滞留時間は試験レポートに記録します。

○ 通常、EUTが卓上型機器の場合は全ての側面に対して試験を実施します。床置き機器の場合は底面の試験は実施しません。

○ 一般規格や製品群規格等で規定されていない限り、磁界を曝すのは入力ポートと表面にのみ実施します。

放射ループを使用したEUTへの試験

5.4. RFイミュニティ試験380MHz~6GHzの校正

① TEMホーンアンテナの前面から100±5mmの距離で、TEMホーンアンテナの中心軸に沿って磁界センサーを配置します。

② 信号発生器の周波数を試験周波数範囲内の最低周波数(380 MHzなど)に設定します。

③ 進行波電力を調整して、目標の試験レベル(100 V / mなど)を設定し、進行波電力と電界強度の読み取り値を記録します。

④ 現在の周波数より最大1%だけ周波数を上げます。

⑤ 次の周波数が試験周波数の最大を超えるまで③~⑤の手順を繰り返し、最後に上限周波数(6GHzなど)で③の手順を実施します。

⑥ 上限周波数で、試験信号の変調をオンにし、変調が正しく実施できているか確認します。

レベル設定の配置

5.5. RFイミュニティ試験380MHz~6GHzの実施

○ TEMホーンアンテナがカバーする均一エリアのウィンドウサイズに応じてアンテナを移動させます。

○ EUT表面の全ての領域が試験されるまで繰り返します。

○ 以下は300mm×300mmの電界均一エリアのウィンドウサイズのTEMホーンアンテナを用いた試験の例で、この例ではEUTの表面全てを試験するためにアンテナを6カ所に設置しています。

300 mm×300 mmのウィンドウサイズを使用した試験の例

○ 試験周波数範囲は、最大1%の周波数ステップで掃引して試験を実施します。

○ 各周波数ステップ時の試験の滞留時間は、EUTが試験信号に適切に応答するのに充分な長さである必要があり、最短滞留時間は1秒です。また、妨害波試験信号の変調は、試験周波数ごとに2サイクル以上行う必要があります。滞留時間は試験レポートに記録します。

○ 試験はEUTが通常の動作モードで、携帯型送信装置からの電磁場に曝される可能性がある全ての表面に対して試験を考慮します。

○ 通常、EUTが卓上型機器、ポータブル機器の場合は全ての側面に対して試験を実施します。床置き機器の場合は底面の試験は実施しません。

○ 一般規格や製品群規格等で規定されていない限り、電磁波を曝す場所は電磁場の入力ポートとしてみる事ができる全ての点、および表面に実施します。

○ 各ウィンドウで、TEMホーンアンテナを水平と垂直に向きを変えて照射します。(水平偏波と垂直偏波を照射します。)

TEMホーンアンテナの向きの例

6.試験結果と試験報告

試験結果はEUTの仕様および動作条件によって以下の分類を行ないます。

1)仕様範囲内の正常動作

2)自己回復が可能な一時的な劣化または機能や性能の低下

3)オペレーターの介入またはシステムの再起動を必要とする一時的な劣化または機能や性能の低下

4)機械やソフトウェアの損傷、またはデータの損失による回復不能な劣化や機能の低下

一般に、妨害信号を放射したすべての期間について装置がイミュニティ耐性を示し、かつ試験終了後にEUTが機能仕様書の中で規定されている要求事項を満たせば、一般的には試験結果は良好と考えられます。試験報告は、試験条件および試験結果を含む必要があります。

● 「試験報告書に記載する例」には次の内容等を記載します。

○ EUTのID(例:商標、製品型番、製造番号など)

○ 試験設備のID(例:商標、製品型番、製造番号など)

○ 試験が実施された環境条件

○ 試験を実施可能にするために必要とした特定の条件

○ 試験の周波数範囲、滞留時間および周波数ステップ

○ 実施した試験レベルおよび変調方式

○ EUTに対するループアンテナとTEMホーンアンテナの位置

○ EUTのケーブルの長さや種類、シールドや接地、動作条件、特定の使用条件

○ EUTやケーブル位置や方向、レイアウトなどが判る説明(写真で代用できます)

○ 試験実施中のEUTの誤動作状況、および持続時間

○ 適用した製品規格や製品群規格等、および性能判定基準

○ EUTの動作条件や動作方法の説明

注意:この試験方法および接続方法はIEC 61000-4-39 Ed.1.0(2017)規格を抜粋し、当社製品で置き換えた例を記載しております。詳細な試験方法等につきましては規格書の原文を御参照ください。

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