株式会社ノイズ研究所

規格情報 【徹底比較】自動車ノイズ試験の要!ISO 7637-2/-3のパルス波形が模擬する車載トラブルとは?

NoiseKen

はじめに

自動車向けのノイズ耐性規格にISO 7637があります。この規格は、車両に搭載される電子機器が、実際の走行環境で発生する様々な電気的な過渡現象(トランジェント)に対して、誤動作や故障を起こさないことを確認するために非常に重要です。

特にISO 7637-2は電源線を、ISO 7637-3は信号線・通信線を対象としており、試験器には様々なパルス波形が規定されています。

弊社、ノイズ研究所では、ISS-7800 Seriesというモデルで試験器を販売しており、本記事では、お問い合わせをいただくことが多い、それぞれのパルスの種類と、それらのパルスがどのような現象を模擬しているのかをまとめたいと思います。

ISO 7637-2 パルス波形と模擬現象

ISO 7637-2:電源線に印加される過渡現象の模擬

ISO 7637-2は、供試品(DUT: Device Under Test)が車両のDC電源線に接続されている状態で、様々な過渡的な電圧変動に耐えられるかを評価する試験です。

Pulse 1

Pulse1

負荷の誘導性負荷遮断(比較的低エネルギーの誘導性負荷の開閉を模擬)による負の電圧スパイク。
これは、車のエアコンやワイパーといったモーターが急に止まった瞬間に、配線に逆向きの「スパーク(火花)」のような非常に短い負の電圧が一瞬発生する現象を模擬しています。
ISO 16750-2の本格的なロードダンプとは異なります。

Pulse 2a

Pulse2a

誘導性負荷の開閉による正の電圧スパイク。
車のモーター(誘導性負荷)などのスイッチがOFFになった瞬間に、配線に一瞬だけ流れる高い電圧(正の極性)を模擬しています。

Pulse 2b

Pulse2b

電源が切られた後に惰性で回り続けるモーターが発電機として働き、電源ラインに発生させる、緩やかに減衰するノイズ電圧を模擬しています。

Pulse 3a

3a

スイッチの機械的な動作やリレーの開閉によって発生する正方向の短時間のノイズ。

Pulse 3b

3b

スイッチの機械的な動作やリレーの開閉によって発生する負方向の短時間のノイズ。

車の中でスイッチをON/OFFした瞬間に、配線に連続してパチパチと非常に速く走る電気のノイズを模擬しています。

Pulse 4

Pulse4

イグニッションON/OFFやクランキング(エンジン始動)時などにおける電源電圧の低下(リセット動作をチェックするための試験)。
エンジンをかけたり止めたりする時、大きな電気を使うせいで、一時的に車の電源が弱って電圧が下がってしまう現象を模擬しています。

Pulse 5a

Pulse5a

オルタネータ(発電機)の故障によるロードダンプ(Load Dump)現象。バッテリー非接続時に、大電流負荷が突然切り離されたときの高エネルギーのサージ電圧。

車が走っている最中にバッテリーが外れてしまい、オルタネータが突然、破壊的なほど大きな電気の波(サージ)を出してしまう現象を模擬しています。

Pulse 5b

Pulse5b

オルタネータの故障によるロードダンプ現象のうち、セントラルロードダンプ保護素子が装着されている車両や、比較的穏やかな過渡現象。

車を守る特別な装置がついているおかげで、バッテリーが外れた時に出るはずの、大きな電気の波が少しだけ弱くなった状態を模擬しています。

ISO 7637-3:信号線・ハーネスに結合するノイズの模擬

ISO 7637-3は、電源線に発生したノイズが、容量性または誘導性結合によって近くの非電源線(信号線、通信線)に回り込む現象を模擬する試験です。

Fast Pulse 3a/3b

3a
3b

スイッチ開閉時の高速なスパイクノイズ。
発生源はISO 7637-2のPulse 3a/3bが模擬するものと同じですが、試験方法に違いがあり、
主に容量性結合クランプ法 (CCC法) または直接コンデンサ結合法 (DCC法)で試験を行います。

Slow Pulse(低速過度パルス)

SlowPulse+
SlowPulse-

ラジエーターファンやA/Cコンプレッサーのクラッチなど、比較的大きな誘導性負荷の遮断によるノイズ。
車の大きなモーター(ラジエーターファンなど)が急に止まった瞬間に、配線に一瞬だけ高いノイズが飛び散る現象を模擬しています。
主に誘導性結合クランプ法 (ICC法) または直接コンデンサ結合法 (DCC法)で試験を行います。

ISO 7637-3の最大の特徴は、ノイズを試験対象機器(DUT)に直接印加するのではなく、DUTに接続されたハーネス(ケーブル)に対して、結合クランプを用いてノイズを印加する点です。
容量性結合クランプ (CCC) や 誘導性結合クランプ (ICC) を使用することで、実際の車両環境でノイズが配線を通じて信号線に誘導的に結合する現象を再現します。この規格は、ECU(電子制御ユニット)などの電子機器が、電源線ではない信号ラインや通信ラインにノイズが結合しても、データの破損や誤動作を起こさないことを確認するために重要です。

最後に

いかがでしたでしょうか?簡単にですが、ISO 7637-2と-3のそれぞれのパルス波形の模擬現象をまとめましたので、参考になれば幸いです。
ISO 7637-2/ISO 7637-3に対応した試験器はISS-7800シリーズですので、ぜひご検討ください。ご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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